医師の解説
食事療法
高齢者における糖尿病の食事療法に関しては、患者個人の生活スタイルを考慮し、食事療法の基本を踏まえつつも、食事療法自体が患者や家族にとって過度の負担とならないように患者ごとの対応が必要となります。
その際には、糖尿病合併症の予防、サルコペニア・フレイルの予防、患者の食生活に関するQOLの維持・向上のそれぞれのバランスをとることとなります。
エネルギー摂取量
高齢者糖尿病患者のエネルギー摂取量は、糖尿病合併症の予防、サルコペニア・フレイルの予防の観点から標準体重あたりエネルギー摂取量として、一般的には35kcal/kg体重以上や25kcal/kg体重未満にならないように推奨されています。
タンパク質摂取量
高齢者糖尿病患者におけるサルコペニア・フレイルの予防の観点からは、重度の腎機能障害(CKD ステージ4以降)がなければ、標準体重あたり1.0〜1.5g/kg 体重のタンパク質摂取が推奨されています。
塩分摂取量
糖尿病による心血管系への合併症予防の観点からは、塩分摂取量も考慮しなくてはなりません。例えば、透析移行につながる糖尿病性腎症の進行の抑制には適切な血圧管理が重要となります。高血圧が認められるようであれば、軽度の食塩制限(7〜8g/日)から開始し、心不全や腎不全の合併の程度に合わせて、食塩制限の程度を強めていくこととなります。
ただし高齢者に対しては、減塩指導の強化が、食事摂取の低下による低栄養につながるリスクがあり、このためバランスの取れた指導が必要となります。
参考文献「月刊糖尿病 Vol.11 No.5」参照
【執筆者】
松田謙(美浜そよかぜクリニック 院長)
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更新日:2022年4月1日